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狂乱廿四孝:感想 [タイトル:か行]

北森鴻『狂乱廿四孝』, 角川書店

狂乱廿四孝 (角川文庫) 北森氏のデビュー作で、第6回鮎川哲也賞を受賞した歴史ミステリ。

原書の東京創元社版の方がデザインが良かったのだが絶版。現在入手しやすいのは角川文庫版で、こちらには本作の原型となった未発表作品(本編読了後にどうぞ)が収録されている。

 明治初頭、活気と昏らさが混在する歌舞伎の世界を舞台に、病を得ながら芝居に執着する当代一の女形田之助の周囲で立て続けに事件が起こる。
その引き金となったと思われる、河鍋狂斎が描いた一枚の幽霊画に隠された秘密とは。刮目して見よ。

 歌舞伎という素材を良く活かしたミステリになっている。
個人的には、歴史上の実在の人物が幾人も登場する点も好みである。
 デビュー作にしては十分達者で、以降の作品も期待して読みたくなるだろう。

 光の加減に応じて左右の瞳の色を違えて書いているところへ持ってきて、目元に浮かんだ怨みの念が恐ろしく写実的で、見るものの背中をゾクリとなで上げる。…中略…狂斎のこの絵は、人が心の中に持つ罪悪感を幾層倍にもふくらませて、苦しめるようだ。(東京創元社版, p.35)


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