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震える岩:感想 [タイトル:は行]

宮部みゆき 『震える岩 : 霊験お初捕物控』, 講談社

震える岩 霊験お初捕物控 (講談社文庫) 霊験お初捕物控シリーズ1作目。
霊験という推理小説では反則技を取り入れながら、大きくはミステリとして成立しており、物語の中に、歴史上の事件や人物が自然に登場し、妙味を加えている。

2作目『天狗風』と、シリーズ原型となった短編「迷い鳩」「騒ぐ刀」あり(『かまいたち』所収)。


 時は、赤穂浪士の討ち入りから100年後の江戸時代。
主人公のお初は、義姉の一膳飯屋で看板娘をしながら、岡っ引きの兄の事件に首をつっこむおてんば娘である。
お初には、人には見えないものが見え、聞こえないものが聞こえる不思議な力(霊験)があったのだ。

 霊験と度胸でがんばるお初と、腕っ節は頼りないが頭は冴える右京之介が、
江戸の町の風物を背景に、“死人が生き返った”事件を追いかける。
二人が様々な人々から話を聞くうちに、事件は深まり、やがて100年前の赤穂事件も絡みはじめ・・・。

 さすが、宮部さんの筆力で、明るく芯の強いお初をはじめ、登場人物たちが生き生きとしている。
最初は頼りないだけの右京之介が、徐々にお初に感化され、成長していく様子も良い。
赤穂事件の真相を探るあたりも、本当にそうだったのかも、と興味深く感じた。
こういう歴史の裏側と描くときは、この作品のラストのように、余韻がある語り口が良い。


こういうことは、初めてではない。知らないひとに出会い、話をしているうちに、
あるいは顔を見ただけで、そのひとの持つ人柄の色合い――匂いのようなものが、
お初の頭のなかに眠っている三つ目の目に見えてくるのだ。
(講談社文庫版, p.309)


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